「それじゃ駄目だ。まず楔をしっかりと決めねえと。」
祖父はそう言って節くれ立った手で僕の持つ斧を握った。その痩せた身体からは想像もできない力を僕の手が感じた。
こんな小説の一番
楔
節くれ立つ
斧
そんな語彙が目と脳を通過する。
その言葉から、どれだけの映像を作り出せるか。
祖父と孫との空気感
周りの暗さ
祖父の人生
孫が見つめる視線
そういうものをゆっくりと静かに、しかし力強く流れる空気と共に読み取れたか
いや
感じられたかどうか。
それを可能にするのは、上に書いた物たちの具体的な映像である。
読めない
意味を知らない
これがどれほど読解を困難にするか。
言うまでもないだろう。
子供の語彙は
生きた言葉の中でこそ増える。