カフェにいる。
大きなショッピングモールの中にあるカフェだ。
先ほど、僕はここ最近ではもっとも危機的な状況にいた。
それは・・・
トイレで起きた。
用をたし、左手でウォシュレットのボタンを押した。
しばし、思考が無になる時間を過ごし
そして「止」と書いてあるボタンを押した。
ピ
と、鳴るはずの音が聞こえない。
ん?
止まらない。
もう一度押す。
またもや「ピ」という音は鳴らず、
モニョ
という、なんとも言えない感触だけ。
相変わらず、やつは僕の肛門に勢いよく打ちつけてくる。
もう、ええて
もう綺麗だから
そんなことを念じても分かる相手でなかろう。
でも、1分、2分と経過するうちにいろんなことが頭を巡る。
サッと蓋を閉めれば・・・
とかね。
ボタンの上部、下部などいろんなところを押す。
ピ
が聞きたくて。
でも鳴ってくれない。
ああ・・・どうする?
緊急呼び出しボタン、押すか?
もうそれしかないのか・・・?
そして3分は経っただろうか。
いや、危機的状況だから時間が長く感じただけかもしれない。
もはやもう僕の体の中でもっとも綺麗な場所が肛門になったであろうその瞬間
心を落ち着けて「無の境地」で真ん中を押すと
ピ
と、心の奥底から望みに望んだ音が聞こえてきた。
そしてやつはおとなしくなった。
ああ・・・
よかった・・・
そしていつもの定型儀礼を行い、トイレから出た。
するとちょうど僕とすれ違うようにして、ちょっとだけ真剣な顔をした若者がそのトイレに吸い込まれていった。
頑張れよ
僕は心の中でそう呟いた。