あれはもう何年も前の話だ。
僕が確かゲラおを自転車の前に乗せて走っていた時だったと思う。
ゲラおは自転車の前の補助シートに座って走るのが大好きだったからね。
その時、ふと道の反対側に自転車から降りようとしている親子を見たんだ。
ママと3歳くらいの息子、そして背中にもっと小さい娘。
だったかと思う。
僕とそのママを挟む道はそこそこに交通量もあるような住宅街の道。
たまたまその時は車は通ってなかったけれど、そのママはその道の危なさを知ってるようだった。
3歳くらいの息子
どうやらなかなかにヤンチャな子のようで、自転車の後ろのシートから早く降りたがってモゾモゾしていたんだ。
でもその自転車の前カゴにはスーパーの大きな袋。
そしてハンドルにもビニール袋がぶら下がっていて、ママはその袋の扱いにまごついてたんだよね。
そしていよいよ我慢ができなくなった3歳息子。
思い切って自転車から飛び降りようとした時
それまで「ダメでしょ!」とか「ちょっと待って!」とか言ってたそのママが叫んだんだ。
「ガルルッ!!!」
と。
その瞬間、
「あー、人ってこんなに静止画みたいに止まるんだ・・・」
って思うくらい、その3歳息子が動きを止めたんだよ。
自転車に飛び降りようとするその瞬間の動きのまま。
ビタっ!
って。
きっと母親の本能叫びと圧が、3歳息子の本能に届いたんだろう。
今でも自転車の親子を見ると思い出す。
あの時のあのママの顔と声
あれは「母は強し」のお手本だろうね。